2015年11月のバルセロナとのクラシコで大敗しベニテスの解任を決断。目標を修正したレアルマドリード
2015-2016シーズンレアルはCL優勝という実績を残したカルロ・アンチェロッティを解任し、新たにナポリのベニテスを監督に迎えた。
がしかし、ベニテスには最高の戦術はあっても選手、ファンから信頼を得る術を持たなかったため
エースクリスティアーノ・ロナウドと関係が悪化。チームの雰囲気は最悪となり同時に成績も低迷。
ベニテスの解任が決定的になったのはバルセロナとのシーズン最初のクラシコである。
レアルはライバルバルセロナに0-4と屈辱的な大敗。
この敗戦で一気にベニテスの支持は低下し
解任報道が過熱した。
獲得ポイントの伸びを試算した結果、この時点で2位との差がある程度ないとリーガ優勝はできないことがわかる
クラシコが行われた第12節での順位は
バルセロナ勝ち点30
アトレティコ勝ち点26
レアル勝ち点24
と2位を維持するどころかレアルは3位に転落。
首位バルサとの差は6ポイントになってしまった。
もうこれではリーガ優勝は無理だと悟ったペレス会長はじめとするレアルの首脳陣は
目標をCL制覇に切り替える。
ここからベニテスの後任探しが始まった。
レアルがシーズン中に監督を解任するのは2008年シェスター以来約8年ぶり
2007-2008シーズンにレアルをリーガ優勝に導いたシェスターは翌年のシーズンで成績不振によりシーズン途中で解任された。
そして2016年1月ベニテスはレアル監督を解任され、新たにジダンが監督に就任した。
シーズン途中に解任されたのはシェスター以来8年ぶりとなる。
クリスティアーノ・ロナウドはベニテス解任後、同監督についてこう語っている。
「ベニテス監督は僕にFKの蹴り方を言ってきた? 監督からは常に学ぶことができる。でも、学べることと、そうじゃないこととあるんだ。誰も教えることができないこともある。FKだけでなく、ボールの蹴り方やドリブル…議論できないこともある。考え方が違うのなら、礼を言うだけさ」
http://www.goal.com/jp/news/73/
監督経験はBチームのみで経験不足のジダン。だがレアルの役員たちは彼だけが持つカリスマ性に賭けた。
ジダンが実際指揮を執ったのは2014-2015シーズンの1年間でしかもトップチームではなくBチーム。
ベニテスと比べればはっきり言って経験不足である。
そんなジダンをなぜ監督にしたのか?
それはベニテスにはない彼が持つ「カリスマ性」にレアルの役員たちが賭けたのだ。
実際、就任前には多くのマドリスタ(レアルのファン)からジダンは支持を受けていた。
それもそのはず、ジダンといえば14年前に9度目のヨーロッパ王者をもたらしたレアルの英雄。
2001-2002シーズンのチャンピオンズリーグ決勝レアル対レバークーゼン戦でみせたジダンのボレーシュートは豪快でとても美しいゴールだったのを覚えている。
ジダンは今の選手たちにとっては憧れの存在。クリスティアーノ・ロナウドは98年フランスワールドカップを優勝に導いたジダンを尊敬
ベニテスでは言うことを聞かなかったレアルの7番クリスティアーノ・ロナウドはジダンが監督になった途端より謙虚になったという。
そう、ロナウドが子供のころに憧れた名選手が監督になったのだ。
それは言うことを聞かないほうがおかしいというもの。
ロナウド自身も持ってないワールドカップ優勝のタイトルを持っているフランスの英雄だったジダン。
ジダンのカリスマのおかげでバラバラになっていたチームはまとまり始める。
クリスティアーノ・ロナウドはジダンについての印象をこう話した。
「僕は、彼にとって監督として初となるCL優勝を実現したい。そして、これから何年も続けることを願っている。監督としての経験は浅いけど、とてもうまく道やスタイルを見つけようとしているんだ。僕はそれが好きなんだよ」
http://www.goal.com/jp/news/73
戦術でもなく、トレーニングでもない、監督の圧倒的なカリスマ性のおかげでチームは強くなる珍しいパターンだ。
アトレティコにリーグ戦で負けるもCLでは快進撃を続け、決勝までたどり着く
ジダンが圧倒的なカリスマ性をはなち、強くなったレアルだが
やはり監督の経験値の差までは埋めることはできなかった。
リーガ第26節ではアトレティコ相手にレアルは1-0で敗れる。
ジダンとシメオネの戦術レベルの差が表れた試合でもあった。
- 戦術レベルの高い相手にはかなわない。
- 対戦相手を分析する能力は前任の監督ほどではない。
- 選手個々に技術的、戦術的アドバイスができない。
これがジダンに欠けている監督しての能力であるともいえる。
だが明らかにリーガのどの監督よりも監督経験が浅いジダンだったが
リーガでは優勝を逃したもののバルサとの勝ち点差1で2位。
はっきり言って及第点以上の結果だといえる。
だが、ジダンのカリスマ性はこれだけでは終わらなかった。
シメオネのアトレティコ相手にチャンピオンズリーグでPK戦の末優勝
シメオネのアトレティコと決勝で対戦したジダン監督率いるレアル。
レアルは試合序盤にDFのセルヒオ・ラモスがヘディングで先制するも、後半アトレティコの途中出場したカラスコに同点ゴールを浴び1-1の振り出しに。
そして90分だけでは決着はつかず、延長戦へ。
レアルの選手はアトレティコ相手にハードワークで対応。あのロナウドも必死にチームのために走り、献身的なプレーをしていた。
延長でも決着はつかず、PK戦に突入。
PK戦では4人目のキッカー相手のサイドバックファン・フランが外し、
最後はレアルの5人目のキッカーロナウドが決め、2シーズンぶりのCL優勝を果たす。
ジダンはこの優勝により、選手、アシスタントコーチ、監督として初めてのヨーロッパ王者を経験した人物となった。
ただ一人の男のカリスマ性に賭け、
CL優勝へ早々に舵を切ったレアル首脳陣の采配が
もたらしたCL優勝。
奇跡の優勝というよりは計算された優勝だったというほうが正しいのかもしれない。
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