青田買いと育成失敗、それでも利益に変える──マンチェスター・シティが築く“売れる育成”というビジネスモデル
サッカー界では近年、若手選手の青田買いが激化している。
その中で注目を集めているのが、イングランドの強豪クラブ、マンチェスター・シティのアカデミー(ユース)戦略だ。
だがその実態は、単なる「育成クラブ」とは一線を画している。
2014年、約195億円(1億5000万ポンド)を投じて設立された「シティ・フットボール・アカデミー」。
ここには、世界中からスカウトされた才能が集められ、最先端のトレーニング環境で技術を磨いている。
だが、このアカデミーの目的は、単にトップチームの即戦力を育てることではない。
「育成失敗」に見える選手をも、“商品”として市場に出し、利益を生み出す。
これこそが、シティが実践する独自のビジネスモデルなのだ。
事実、トップチームの登録枠は限られており、ファーストチームでプレーできるのは最大でも25~30名程度。
そこに滑り込める選手はほんの一握りであり、多くの若手は“育成失敗”としてクラブを去る。
しかし、シティはこの“失敗”を損失ではなく収益化している。
才能ある若手を他クラブに売却し、その移籍金でアカデミー運営を回すというサイクルが確立されているのだ。
このスキームを支えているのが、世界各地に広がるシティ・フットボール・グループ(CFG)によるグローバルなスカウティング網だ。
ニューヨーク・シティ(アメリカ)、横浜F・マリノス(日本)、ジローナ(スペイン)、メルボルン・シティ(オーストラリア)、パレルモ(イタリア)など、提携クラブとの連携により、スカウト網を広げ、シティは世界中の才能を青田買いし、最終的に選手価値を高めて売却していく。
※横浜F・マリノスは近いうちにCFGと契約終了となる噂がある。
こうした流れの中で、実際にファーストチームには昇格できなかったが、他クラブで成功を収めた選手も数多い。
つまり、「育成失敗組が稼ぐアカデミー」という皮肉な構図が、実はクラブの財源の一部を支えているというわけだ。
ではここで、かつてマンCのユース(アカデミー)に所属しながら、トップ昇格を果たせなかった“育成失敗選手”たちの中から、現在ヨーロッパのトップリーグで活躍している7選手を紹介しよう。

マンチェスターシティっていい選手を買うお金あるから別にアカデミーで選手育てる必要なくね?って思うけどなー。でもアカデミー出身選手高値で売却しているから存在意味はあるけど笑
青田買い育成失敗選手①MFコール・パーマー チェルシーFC所属
Embed from Getty Imagesマンチェスター・シティ青田買い育成失敗選手1人目はコール・パーマーだ.
2019-20シーズンにU-18チームをリーグとFAユース杯の2冠に導き、2020年9月にマンチェスター・シティトップチームデビューを果たす。
しかし、フォーデンやデ・ブライネなどの逸材が数多く存在するトップチームでの出場機会に恵まれず、公式戦41試合の出場で、6ゴール2アシストを記録するだけとなった。
マンチェスター・シティ時代はほとんど出番がなかったパーマーだったが在籍時にプレミアリーグ、FA杯、CL制覇を経験。
そして、シティの監督であるペップグアルディオラから「残るか売却されるかだ」と言われたパーマーは、レンタル移籍を望んでいたものの叶わず、2023年に自身が行きたいといったチェルシーFCへ移籍金4500万ポンド(約88億円)で移籍をする。
チェルシーFCでは、移籍した直後から瞬く間に中盤の主力となり、最初のシーズンで公式戦45試合出場で25ゴール15アシストをマークする。
若手年間賞やマンオブザマッチ、月間MVPなどの数々の偉業を成し遂げ、2025年のクラブW杯ではゴール・アシストを記録してゴールデンボールも受賞した。
現在はチェルシーFCの心臓となっており、コール・パーマーがいないとチェルシーFCの最大限の力を発揮できないと言わせるほどである。
マンチェスター・シティにとっては「育成失敗」の象徴とも言えるのだ。
青田買い育成失敗選手②MFジェイドン・サンチョ アストン・ヴィラ所属
Embed from Getty Imagesマンチェスター・シティ青田買い育成失敗選手2人目のジェイドン・サンチョは、2017年にドルトムントとプロ契約をした。
17歳6ヶ月26日という若さでブンデスリーガデビューを飾ると、18歳でイングランド代表でもデビューをしている。
そこから137試合をこなし、ドルトムント時代はDFBポーカルやDFLスーパーカップを制し大会得点王にも輝いた。
そこからサンチョは、2021年にプレミアリーグのマンチェスター・シティ永遠のライバルであるマンチェスター・ユナイテッドへ移籍する。
ドルトムントを経由したとはいえ、これはシティのファンから見れば、まさに裏切り移籍と言っても過言ではないだろう。
しかし、肝心のマンチェスター・ユナイテッドでは、自身の力を未だ発揮できていない。功績といえばEFLカップを獲得したくらいなものだ。
ついに2025年夏にサンチョはマンチェスター・ユナイテッドを構想外となり、アストン・ヴィラにレンタル移籍加入することとなった。
プレミアリーグでは実力を発揮できていないことから、マンチェスター・シティが放出の判断をしたのは正しかったといえるかもしれない。
もしシティでプロ契約をしていたら、ペップ・グアルディオラ監督の下、フォーデンやデ・ブライネ、ベルナルド・シウバといったオフェンス陣の控えとして活躍している未来もあったのだろうか?
さすがにそれはタラレバすぎるか。
サンチョのキャリアは現時点では成功とはいえない。彼にとって一番良かったのはドルトムントに残ることだったと思う。
青田買い育成失敗選手③DFジェレミー・フリンポン リバプール所属
Embed from Getty Imagesマンチェスター・シティ青田買い育成失敗選手3人目はオランダ出身のジェレミー・フリンポンである。
フリンポンはシティのU21まで育成されるも、2019年に現在日本代表前田大然が所属しているセルティックへ移籍。
スコットランドで国内3冠を達成し、展開力や武器であるスピード、ドリブル突破力で評価を上げた後、2021年バイエル・レバークーゼンへとステップアップ。
レバークーゼンは2023-24シーズンは開幕から25勝4分とリーグ無敗の新記録を樹立するとともに、悲願のブンデスリーガ初優勝を達成した。
ジェレミー・フリンポンもシャビ・アロンソ監督の指導で覚醒し、レバークーゼン優勝の立役者の一人となった。
2025年の移籍市場で移籍金は3,500万ユーロでリバプールへと移籍し、オランダ代表右SBとして世界レベルに成長したのだ。
フリンポンが在籍していた当時のマンチェスター・シティには、ワールドクラスの右SBカイル・ウォーカーやジョアン・カンセロなどのスター選手がおり、ステップアップは現実的に厳しかったといえる。
しかし時が経ちジェレミー・フリンポンが、マンチェスター・シティのプレミアリーグ優勝を争うライバルであるリバプールに移籍してしまうのは皮肉な話である。
青田買い育成失敗選手④DFキーラン・トリッピアー ニューカッスル・ユナイテッド所属
Embed from Getty Imagesマンチェスター・シティ青田買い代育成失敗選手4人目はキーラン・トリッピアーである。
キーラン・トリッピアーは幼少期からマンチェスター・シティのアカデミーに所属していたが、トップチームに届かずバーンズリーなど複数のレンタルを経て、2012年にバーンリーへ完全移籍した。
そこから、プレミアリーグのBIG6であるトッテナムやラ・リーガの強豪であるアトレティコ・マドリード、そして最終的にはニューカッスル・ユナイテッドへと移籍を果たした。
そこまでの道のりでは、CL制覇やリーガ制覇なども経験してきた。
若き頃にはマンチェスター・シティで芽を出すことが出来なかったが、イングランド代表のキャプテンを背負うほどの大きな男となり、確かなキャリアを築いた選手の一人と言えるだろう。
青田買い育成失敗選手⑤GKロリス・カリウス シャルケ04所属
Embed from Getty Imagesマンチェスター・シティ青田買い育成失敗選手5人目はゴールキーパーのロリス・カリウスである。
カリウスはシュトゥットガルトからマンチェスター・シティのユースチームに加入するも、トップチーム出場は叶わず、本拠地を離れてドイツブンデスリーガのマインツへ移籍。
その後マンCと同じプレミアリーグのリバプールへ移籍し、2018年のCL決勝で致命的なミスを演じてしまったことでキャリアは大きく陰り、それ以降は複数クラブへのレンタル移籍を繰り返した。
期待からの急落を象徴する選手の一人ではあるが、マンチェスター・シティでのプロ契約が果たせていれば、カリウス自身のキャリアとマンチェスター・シティの未来はもっと明るくなっていたのかもしれない。
2025年現在はドイツブンデスリーガのシャルケ04に所属している。
青田買い育成失敗選手⑥MFマイケル・オリーセ バイエルン所属
Embed from Getty Imagesマンチェスター・シティ青田買い育成失敗選手6人目のマイケル・オリーセはアーセナル→チェルシー→マンチェスター・シティの順番にアカデミーを転々とした後、わずか半年ほどでシティを退団しレディングFCへと移籍した。
退団理由の一つとして、「若さゆえの過剰さや傲慢さが目立った」といった記述もあり、
当時の状況では受け入れがたいと判断された。
その後、全くの無名選手としての再スタートを切り、2019年3月にプロデビューを果たした。
そして2021年夏、クリスタルパレスに加入し、すぐにクラブの創造性の中心選手として活躍。
クリスタルパレスでのクラブ最多アシストなどの記録が世間で話題となり、2024年夏にはバイエルン・ミュンヘンへの大型移籍を遂げた。
現在では、バイエルン・ミュンヘンにマッチしたスター選手の一人となっている。これからの代表での活躍も期待できそうだ。
青田買い育成失敗選手⑦MFロメオ・ラビア チェルシーFC所属
Embed from Getty Imagesマンチェスター・シティ青田買い育成失敗選手7人目ベルギー生まれのロメオ・ラビアは、アカデミー時代にアンデルレヒトで育ち、16歳でマンチェスター・シティに加入した。
すぐにU18からU23へと昇格し、プレミアリーグ2(イングランドのU-17からU-21までのリーグ)優勝に貢献すると共にシーズンの最優秀選手に選出されるなどの高い評価を受けていた。
そんなロメオ・ラビアが2021年9月に初めてトップチームに招集された。
グアルディオラ監督は当時守備的MFフェルナンジーニョが30代となり高齢となっていたことからラビアをその後継にしたいという意図もあったそうだ。
しかしそんなグアルディオラ監督の期待もむなしくラビアはEFLカップでプロデビューをしたものの結果を残すことが出来ずにトップチーム定着には至らなかった。
そして、2022年にサウサンプトンに移籍後、2023年の夏にチェルシーFCへの総額移籍金5800万ポンド(約107億円)の大型移籍を成立させたのだ。
若いこの天才のこれからどんなプレーを見せてくれるのか非常に楽しみである。
まとめ
この記事では、現在海外サッカー界で中心とされるマンチェスター・シティがユースで育てようとしたものの惜しくも手放し、育成失敗となった選手たちを紹介した。
どの選手も不思議なことに、プレミアリーグのクラブに一度は在籍していたことのある選手たちである。
やはりマンCに育てられた選手はプレミアリーグのクラブが欲しがるのだろうか。
この選手たちが退団せずマンチェスター・シティに所属していたらどうなっていたのかという妄想をするとまた面白くなる。
それはFCシリーズやフットボールマネージャーなどのゲームでシミュレーションをしてもいいかもしれない。
マンチェスター・シティが手放してしまったこのトップ選手たちがこれからどのようなプレーを魅せ、子供たちにどんな希望や勇気を与えてくれるのかがとても楽しみである。
これらのトップ選手たちを我々と共に見届けていこう。

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