また素晴らしい選手がユニフォームを脱ぐ。
圧倒的な左足を持つ、オランダを代表するストライカーの”RVP”ことロビン・ファン・ペルシが
今シーズン限りで現役を引退する意向を表明したのである。
ファン・ペルシの全盛期をリアルタイムで目にしている私にとってもこの引退は残念でならない。
今回はそんな多くのサッカーファンを虜にしたファン・ペルシの経歴とプレースタイルを紹介していく。
アーセナル時代は得点王にも。ユナイテッド時代は日本代表香川真司と共にプレー
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オランダ出身のファン・ペルシはエールディビジのフェイエノールトで
プロサッカー選手としてのデビューを飾る。
フェイエ時代には小野伸二ともプレーしていた。
当時はウイングのポジションで地位を確立し、溢れる才能をいかんなく発揮。
だが性格に難があり、それが彼の成長を妨げる最大の要因だった。
そんなファン・ペルシの才能を高く買い、獲得に乗り出したのが、
当時若い選手を青田買いして一流選手に育て上げるのに長けていたアーセナル。
アーセナルで長期政権を築いていたヴェンゲルに見い出され、移籍を果たす。
移籍当初は絶対的エースのティエリ・アンリが君臨し、怪我もあり出場機会に恵まれない年もあった。
しかし10-11シーズンの怪我から復帰後にその才能が爆発。
ストライカーとしてプレーしたファン・ペルシは得点を量産。
さらにキャプテンに就任した11-12シーズンには
昨シーズンのペースを上回り得点を重ね、最終的には30ゴールを挙げ得点王に輝く。
アーセナルでのキャリアハイの成績を残したファン・ペルシだったが、
なんとその翌年にガナーズの宿敵の一つであるマンチェスター・ユナイテッドに電撃移籍を果たす。
当然の如く古巣から反感を買い、さらにはユナイテッドサポーターから
大きな期待を寄せられるという大きなプレッシャーの中、
ファン・ペルシはリーグ戦26得点を叩き出し異なるチームで
2年連続で得点王に輝くという離れ業を成し遂げ、
その年に勇退するサー・アレックス・ファーガソンにリーグ優勝をプレゼントした。
優勝したシーズンでは日本代表香川真司もドルトムントから
ユナイテッドに移籍しており、共演を果たしている。
そんなプレミアを代表するストライカーだったファン・ペルシも36歳となり、
現在は、フェネルバフチェを経てプロデビューを果たした古巣フェイエノールトでプレーしている。
クラブだけでなく代表でもW杯でも2010年に準優勝、
2014年に3位の成績を残したオランダ代表に不可欠な存在だった。
【ウイングからストライカーに変貌】かっこいいプレースタイル
ストリートサッカーで磨いた多彩なボールコントロールとフィジカルコンタクトの強さ
アーセナルに加入する前のフェイエノールトではウイングとしてプレーしていただけに
足元の技術に長けている。
ストリートサッカーで培ったボールコントロールは183㎝という大柄な体格からは想像できないほどボールタッチが繊細で早い。
時にはフットサルと思わせる程の華麗なテクニックを披露することも。
足が長く、懐も深いためボールを相手の届かない場所に保持するキープ力も備えている。
さらにはフィジカルコンタクトも強く、激しいプレッシャーに晒されてもボールを失わない。
局面を打開することも、味方に時間とスペースも与えることができ、味方からすると
安心してボールを預けられるFWだ。
抜群の決定力とパンチ力を誇る左足と点で合わせる技術
ファン・ペルシの最大の武器と言えば一振りで流れを変えることができる左足だ。
ストライカーとしてのシュート精度とシュートの種類は当然の如くハイレベルで、
キャノン砲のような強烈なシュートを放ったかと思えば、
鮮やかな放物線を描くコントロールシュートも放ち、どちらも確実に枠を捉える。
対戦相手にとっては悪魔のような左足だ。
また、クロスやパスにダイレクトで合わせる技術も一級品で、
ファン・ペルシのゴールはアクロバティックで強烈な印象を残すものが多い。
代表的なゴールが06-07シーズンのプレミアリーグで
チャールトン・アスレティック相手に決めたジャンピングボレー。
マイナス気味のクロスに後方から全速力で走り込んだファン・ペルシは
トップスピードのままペナルティエリア手前で左足を一閃。
難しい体勢からのコース、ボールスピード共に完璧な高難易度の
ジャンピングボレーを決めてみせたのだ。まさにここしかないタイミングで合わせた。
10年以上経過した現在も、アーセナル史上のベストゴールに挙げられることもあるスーパーゴールだ。
更にはヘディングで合わせるのも得意で、
2014年のW杯のスペイン戦で見せたアクロバティックなダイビングヘッドも有名なゴールだ。
冷静にGKカシージャスの位置を見極めて決めたヘディングで、
後方からの難しいボールだったにもかかわらず、確実に決めてくるのはさすがと言うほかない。
味方も活かすことができるチャンスメイク能力
先にも述べたように、ファン・ペルシは元々ウイングの選手であるため、
チャンスメイクの能力にも長けている。
まずはクロス。得意の左足から絶妙なタイミングとスピードで味方に合わせる。
高速のボールをDFとGKの間に放り込むなどの、相手にとっては非常に厄介なクロッサーとなる。
次にスペースメイク。抜群の決定力を持つ為、
必ずCBの執拗なマークにあうが、それを逆手に取り、
サイドに流れてCBを引っ張り出し、味方に走り込むスペースを与える。
最後にラストパスだが、これも非常に精度が高く、
パスを出す独特の間合いと感性を持ち合わせる。
これがDFからすると読みづらく、多くのチャンスをもたらす。
事実、ファン・ペルシは08-09シーズンには11ものアシストを記録し、
アシスト王にも輝いている。
なにより彼は我の強い選手が多いストライカーには珍しく、
パスを出す方がゴールの可能性が高ければ躊躇なくパスを選択する。
ウイングの経験とフォア・ザ・チームの精神が根底にあるからこそ、
アシストもできるストライカーというプレースタイルを確立したのだろう。
プレースタイルは違えど、ゴールとアシストの両方を量産する活躍は、
ガナーズの偉大なる先人”ティエリ・アンリ”彷彿とさせた。
なんでもできるところは非論理的だがかっこいいといえるだろう。
引退後の選択は監督?解説者?旅人?
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今季限りの引退となると、やはり気になるのは引退後の動向である。
ファン・ペルシ自身はこの件に関してはまだ明言をしていないが、彼の中ではある程度ビジョンはあるのであろう。
先日モナコの監督に就任したティエリ・アンリのように、
監督を目指し、コーチとして指導者としての経験を積み、いずれは監督としてタクトを振るうのか。
または、ポール・スコールズのように引退後はサッカー解説者として、
古巣や元対戦相手に対して辛口でコメントするのか。
またはアレッサンドロ・デル・ピエロのようにサッカーの普及のために世界各国を巡るのか。
どのような選択をするのかは大変興味深いところである。
しかしながら、個人的には引退後は一旦酷使した身体をしっかりと休めてほしい。
そこから熟考して、悔いの無いような選択をしてほしいと、彼の一人のファンとして切に願う。
選手として最後のシーズン。ロビン・ファン・ペルシはどのようなプレーで自らの花道を飾るのか。
サッカーファンであればそのプレーをしっかりと目に焼き付けておきたい。
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