日本人選手がセリエAのクラブに移籍しないのはカルチョスキャンダルによるリーグレベルの低下
1994年のワールドカップ決勝。
あのPK戦でロベルト・バッジョが空へ蹴り上げたボールを見てから、私はセリエAというリーグに取り憑かれました。
あの時代のセリエAは、間違いなく世界の中心だったといえるでしょう。
当時活躍していた日本代表の選手達もイタリアに移籍することを夢見ていました。
しかし時が経過した2026年の今、日本人選手にとってセリエAは「第一志望のリーグ」ではなくなっています。
2026年の現在海外サッカーで人気のあるリーグはイングランドのプレミアリーグやスペインのリーガエスパニョーラとなっており、日本人選手にセリエAのクラブは人気がありません。
なぜ日本人選手にセリエAは人気がないのか?その移籍しない理由として2つあります。
- カルチョスキャンダルによるリーグレベルの低下
- セリエAクラブの財政面の悪化
この記事では上記2つの要点から日本人がセリエAのクラブに移籍しない理由について深堀していきます。
さてセリエAといえば、1990年代から2000年代前半まで世界中の代表クラスの選手が各クラブに所属していて、世界最高峰のリーグと言われていました。
日本人選手も日本サッカー界のキングと言われている三浦知良をはじめ、中田英寿、現在日本代表コーチを務める名波浩、中村俊輔といった日本代表選手がセリエAに挑戦・活躍していました。
Embed from Getty Imagesですが、2026年5月現在セリエAに所属している日本人選手は、パルマに所属する日本代表GK鈴木彩艶選手だけです。
過去に世界最高峰のリーグと言われていたセリエAが、日本人選手が移籍しない人気のないリーグになってしまったのか?
疑問に思う若いサッカーファンも多いのではないでしょうか?
先ほどもお伝えしましたが、最大の要因は2006年5月に発覚したカルチョスキャンダルにあります。
ここからは、カルチョスキャンダルを含め、日本人選手がセリエAのクラブに移籍しない理由、セリエAが日本人に人気がない理由について私なりにまとめていきます。
日本人選手がセリエAのクラブに移籍しない理由①:カルチョスキャンダルが招いたセリエAの衰退と資金力の崩壊
日本人がセリエAのクラブに移籍しない一番の理由が、カルチョスキャンダルによるリーグの魅力とクラブの資金力の低下による衰退です。
1980年代後半から2000年代前半にかけてのセリエAは世界各国のスター選手が各クラブに集結し、世界最高峰リーグと呼ばれるにふさわしいリーグでした。
若いサッカーファンの方々にはセリエAが世界最高峰リーグと言われても全く想像がつかないのではないでしょうか?
当時のセリエAには、若いサッカーファンでも名前だけなら聞いたことがあるディエゴ・マラドーナや元ブラジル代表の怪物ロナウド等多数のレジェンド選手が1度はセリエAでプレーしていたというぐらいのリーグでした。
Embed from Getty Images今でいうところのイングランド・プレミアリーグのようなリーグだったといえば想像がつくかもしれません。
では、なぜリーグが衰退するような事態になったのか?
そこには、イタリアサッカー界の根幹を揺るがす大事件が起きたからなのです。
その事件とは、通称「カルチョスキャンダル」と言われている事件で、2005年頃から審判買収等の不正疑惑が囁かれていました。
疑惑が表舞台に出てきたのが2006年5月、くしくもイタリア代表が2006年ドイツワールドカップで4回目の優勝を飾る直前に起きました。
この事件は、ユヴェントスやACミラン、フィオレンティーナやラツィオといったセリエAの名門クラブの幹部、イタリアサッカー連盟、審判までもが関与する大事件で、イタリアサッカー界のみならず、世界中のサッカー関係者に衝撃を与えたのです。
事の発端は、当時ユベントスの全権を任されていたルチアーノ・モッジGMやアントニオ・シラウドCEOが主導してイタリアサッカー連盟の責任者と癒着し、ユヴェントスが有利になるような審判団を選出していたことが明るみになったことです。
この件が発覚後、セリエAを含むイタリアサッカー連盟のクラブチームのほとんどが調査され、ACミランやフィオレンティーナ、ラツィオといった名門クラブも関与していることがわかりました。
ユヴェントスの疑惑を発端に始まったカルチョスキャンダルは、イタリアサッカー界に影を落としていくこととなります。
捜査の過程で、各クラブの幹部やイタリアサッカー連盟関係者、審判に至るまで多数が処分され、関与したクラブもスクデットはく奪や勝ち点没収、2006/2007シーズンのセリエB降格や勝ち点マイナススタートを余儀なくされたのです。
この影響を受けた各クラブ、特に重い制裁をくらったユベントスは、今後の財政状況を考え、世界的なスター選手といった主力を放出せざるを得なくなりました。
放出先は、カルチョスキャンダルと関わりのなかったインテルやASローマといった名門クラブ、あるいはスペインなどの海外のクラブです。
ユベントスにいたってはイブラヒモビッチやヴィエラなどのスターをライバルインテルに売らなければならない屈辱を味わっています。
Embed from Getty Imagesその結果、処分を受けた名門クラブだけでなく、こうしたビッグクラブとの対戦で収益を上げていた中堅以下のクラブも、次第に財政的に厳しい状況に追い込まれていきました。
世界的なスター選手達の海外流出は、リーグレベルと魅力を低下させる最大の要因となったと言えるでしょう。
リーグの魅力が低下すると、放映権料や入場料、広告費というようなクラブ収入が大幅に減ることとなり、セリエAで中堅以下と言われるクラブの中には、財政難により経営が難しくなったクラブも少なくはありません。
カルチョスキャンダルはイタリアだけでなく、欧州全体、さらには日本にも影響を与えました。
1990年代後半からは、中堅以下のクラブが日本市場に活路を見出し、Jリーグから代表クラスの選手を獲得して活躍させ、その後より高額な移籍金で他クラブへ売却するという流れが定まりつつありました。
しかし、カルチョスキャンダル後の財政難により、こうしたクラブは日本人選手に資金を投じる余裕を失っていきます。
その結果、日本人選手のセリエA移籍は徐々に減少していったのです。
カルチョスキャンダルが起きる前の2005年ぐらいまでは日本人選手がセリエAに数多く所属し、海外サッカーの話題と言えばセリエAの話題でした。
カルチョスキャンダルの影響でセリエAが衰退し日本人選手が減少したことで、イタリアサッカーは日本人選手にとっての魅力も薄れていきました。
さらにこの時期には、他の欧州5大リーグで活躍する日本人選手も現れ始めたため、セリエAへの関心は徐々に低下していったと感じています。
このような事態は2010年代に入るまで続き、2010年代前半に長友佑都や本田圭佑がセリエAで活躍するまで続く暗黒期と言われる時代へと突入していくのです。
ここまで解説したカルチョスキャンダルが、セリエAのリーグ衰退の一番の要因と言って間違いありません。
日本人選手がセリエAのクラブに移籍しない理由②:日本人選手のステップアップの流れ
日本人選手がセリエAのクラブに移籍しない2つ目の理由は、ここ10年ぐらい、日本人選手が海外移籍をする上でのステップアップしていく流れが大幅に変わったことが挙げられます。
日本人選手の海外移籍を語るうえで外せないのが、中田英寿選手です。
Embed from Getty Images1998年、ベルマーレ平塚(現:湘南ベルマーレ)からセリエAのペルージャへ移籍し活躍。
そのプレーが評価され、名門ASローマへとステップアップを果たします。
そして優勝(スクデット)を経験し、日本人選手の海外挑戦における先駆けとなる実績を残しました。
中田が活躍して数年は、日本人選手の海外挑戦と言えばセリエAという流れが続きましたが、その後日本人選手の海外移籍の状況が変わっていきます。
その流れの変化についてまとめると以下の通りです。
- 中田英寿:ベルマーレ平塚→ペルージャ
- 名波浩:ジュビロ磐田→ベネツィア
- 中村俊輔:横浜Fマリノス→レッジーナ
- 長友佑都:FC東京→チェゼーナ
- 長谷部誠:浦和レッズ→ヴォルフスブルク
- 内田篤人:鹿島アントラーズ→シャルケ04
- 岡崎慎司:清水エスパルス→VBシュトゥットガルト
- 香川真司:セレッソ大阪→ドルトムント
- 本田圭佑:名古屋グランパス→VVVフェンロー
- 吉田麻也:名古屋グランパス→VVVフェンロー
- 久保建英:バルセロナ→FC東京→レアル・マドリード
- 遠藤航:浦和レッズ→シント・トロイデン
- 富安健洋:アピスパ福岡→シント・トロイデン
- 伊東純也:柏レイソル→KRCヘンク
- 南野拓実:セレッソ大阪→ザルツブルグ
- 鎌田大地:サガン鳥栖→フランクフルト
上記のようにセリエAのみならず、ドイツ、オランダ、ベルギーや欧州各国の2部リーグにも数多くの選手がJリーグから海外移籍をしています。
そこからステップアップしている選手も数多くいますし、高校卒業から海外移籍する選手も出てきているのが現状です。
海外移籍=セリエAという時代もありましたが、現在は色々な選択肢が増えてきていることがわかりますね!
日本人選手がセリエAのクラブに移籍しない理由③:外国人枠
日本人選手がセリエAのクラブに移籍しない3つ目の理由は、外国人獲得枠の問題です。
まず前提として、欧州5大リーグの中でEU外枠の影響を受けるリーグはそれぞれ特徴があります。
スペインのラ・リーガやフランスのリーグアンにも制限はありますが、日本人選手がこれらのリーグからキャリアをスタートさせるケースは多くありません。
一方で、ドイツのブンデスリーガには外国人枠の制限はないものの、自国選手や育成選手を重視する規定があり、結果的に外国人選手のハードルは低くありません。
また、イングランド・プレミアリーグは外国人枠こそないものの、労働ビザの取得条件が厳しく、Jリーグから直接移籍する難易度は高いリーグとなっています。
日本代表MF鎌田大地もフランクフルトと日本代表としてカタールワールドカップで活躍したことによりイタリアでの評価を高め、2023年にミラン移籍の手前まで話が進みました。
しかしミランは急遽鎌田大地の獲得を中断。彼は結局本命ではないラツィオに移籍することになります。
鎌田大地はラツィオで不遇の時間を過ごし、わずか1年で退団しプレミアリーグのクリスタルパレスへとフリーで移籍してしまいます。
Embed from Getty Imagesこのように実績のある日本代表選手でさえ、セリエAの名門に移籍することは困難なのです。しかも当時鎌田大地は移籍金がかからないフリーで獲得ができる選手でした。
鎌田が移籍できなかったのはセリエAがEU外選手のシーズン中の新規登録枠を原則として2人までと定めているからであり、この制限が大きな壁となっているいい例だったといえるでしょう。
クラブは限られた外国籍枠を使う以上、未知数の若手よりも、すでにヨーロッパで実績を残している選手や即戦力を優先する傾向があります。
そのため、Jリーグから直接セリエAへ移籍するルートは非常に狭くなっているのが現状です。
さらにセリエAでは、25人の登録枠のうち一定数をイタリアで育成された選手で構成する必要があり、自国選手やユース出身選手を重視する仕組みも整っています。
このような制度の中では、日本人選手が外国籍枠を使ってまで獲得されるためには、海外での実績が不可欠となります。
実際に、現在鈴木彩艶選手もベルギーでの実績を経てセリエAへステップアップしています。
以上の点から見ても、外国人枠の存在は日本人選手がセリエAに移籍しにくい大きな要因の一つとなっています。
日本人サッカーファンにセリエAが人気ない理由
セリエAが日本人サッカーファンに人気ない1番の理由は、日本人選手が少ないことです。
日本人選手が少ないということは、ライト層のファンからは興味を持たれることは少なくなり、日本人選手の所属が多いドイツ・ブンデスリーガやイングランド・プレミアリーグを視聴するというライト層が多くなります。
その他に考えられるのが、世界的に有名な選手の所属がないことが考えられます。
誰もが聞いたことがあるようなサッカー選手は、セリエAにほとんど所属していないのがライト層からみた現状となっています。
この先では、この2点につきまして詳しく解説します。
日本人にセリエAが人気ない理由①:日本人選手が少ない
Embed from Getty ImagesセリエAが日本人に人気がない理由は、日本人選手が鈴木彩艶選手しかいないことにも原因があります。
過去を遡ると、中田英寿、中村俊輔、名波浩、柳沢敦、長友佑都や本田圭佑、直近では富安健洋、吉田麻也、鎌田大地といった日本代表の主力選手がセリエAに所属していました。
特に2002年日韓ワールドカップが開催されていた頃のサッカー人気は、Jリーグ開幕時並みに人気があり、海外サッカー=セリエAという風潮があったほどです。
その当時を知るファンからしてみれば、今のセリエAが置かれている状況というものが想像できないのではないでしょうか?
現在はプレミアリーグが一番魅力的なリーグとされていて、セリエAは欧州5大リーグの中でも4番目の視聴数となっています。
今後、日本人選手が増えて往年のような活気を取り戻してほしいと筆者は願っています。
日本人にセリエAが人気ない理由②:世界的に有名な選手がいない
現在、セリエAに所属している選手の中で誰もが知っているような有名選手がいないという点も日本人にセリエAが人気のない理由です。
現在、誰でも知っているサッカー選手と言えば、リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド、キリアン・エムバぺといった選手たちが挙げられると思います。
その選手たちがいるリーグは注目したいという気持ちはあるはずです。
セリエAが世界最高峰のリーグと言われていた頃には、ジダンやロベルト・バッジョ、ロナウドというような誰もが知っている有名選手が多数いました。
Embed from Getty Images日本でワールドカップがあった年代ということもあり、海外サッカーが身近に感じることもできたという要因もありましたが、確実に誰もが知っている選手がいるということが日本人に人気が出る理由となると思います。
サッカーファンからしてみれば、今のセリエAにもインテルに所属するラウタロ・マルティネスやACミランに所属するルカ・モドリッチというように実力があり有名な選手がたくさんいます。
だからこそ、セリエAの試合を観戦して素晴らしい選手がいるということを知ってほしいです。
日本人にセリエAが人気ない理由③:アパレルブランド進出
若い日本人に今最も人気のあるクラブといえばプレミアリーグのマンチェスターシティかなと思います。
セリエAをずっと愛してきた世代からすればシティのようなクラブに一切の魅力を感じませんし、ユニフォームなど一生着ることはないでしょう。
しかし事実としてシティやパリサンジェルマンのような資金力でのし上がってきたクラブの方がセリエAのクラブよりも日本での露出が高いです。
このクラブたちが欧州での地位を確立しているのも理由の1つではありますが、やはりアパレルブランドとしての価値が高いからだといえます。
マンチェスターシティはレディースファッションにも力を入れアパレルとしてのブランドを確立しようしていますし、パリサンジェルマンは長いことバスケットボールのスーパースターマイケルジョーダンとのコラボを継続しています。
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このように日本人選手が所属したことのない2つのクラブが日本で人気があることがセリエAの関心度を低くしているともいえるのです。
若い世代のサッカーそのものの関心が薄れる中でセリエAのユベントスやACミランなどのクラブもこのようなファッションにもっと力を入れなければ日本でファンを獲得していくことは今後難しくなることでしょう。
まとめ
ここまで、日本人選手がセリエAに移籍しない、人気がない理由についてまとめてきました。
1990年代から2000年代前半にかけて日本人の中では、海外サッカー=セリエAという風潮がありました。
当時を知る身としては、現在のセリエAの人気低下が信じられないぐらいで、同じ気持ちのサッカーファンも少なくはないはずです。
なぜここまで人気が低迷したかというと、カルチョスキャンダルによるスター選手の大量流出やイタリア代表の成績の低迷という部分が大きいのではないでしょうか?
特にワールドカップでのイタリア代表の成績の乱高下はかなりやばいです。
イタリア代表は2006年ドイツワールドカップで優勝した後、2025年現在までワールドカップで目立った成績をあげられていません。
それどころか、2010年南アフリカワールドカップ、2014年ブラジルワールドカップは2大会連続でグループリーグ敗退、2018年ロシアワールドカップ、2022年カタールワールドカップは本選出場すら逃しています。
2026年北中米ワールドカップ欧州予選はノルウェーに次いで2位となり、欧州プレーオフを勝ち上がれず、3大会連続でワールドカップ出場を逃しています。

このように自国の代表チームがワールドカップ出場もままならないような状況だと、リーグの魅力もなかなか上がらず、各クラブの財政にも影響を与えています。
財政的に厳しいクラブが多い中で、市場価格が年々上昇している日本人選手を外国籍枠で獲得することは、他のEU外選手と比べてもリスクが高いと考えられています。
そのため、需要と供給の観点から見ても、日本人選手がセリエAに移籍しにくい要因となっているのです。
カルチョスキャンダルによりスター選手が少なくなり、選手たちの広告収入や入場料、放映権料が少なくなっていったセリエAクラブは財政的にも苦しい状況に立たされ続けました。
ユベントスやACミラン、インテルといった名門クラブでも厳しい状況になっていたので、それ以外のクラブは運営危機に陥ったクラブも少なくありません。
そんなセリエAの各クラブには、当時のように日本人選手を青田買いして、第2の中田英寿を見つけるほどの余裕がなくなってしまいました。
また、日本人選手にもドイツやベルギー、オランダといったヨーロッパ挑戦への選択肢が増えたことも原因の一つでしょう!
この先、JリーグからセリエAという選択肢は増えそうにもありませんが、現在パルマに所属する鈴木彩艶のように、5大リーグ以外からの挑戦やセリエA上位チームへのステップアップで他の5大リーグから挑戦する選手は間違いなく出てくるはずです。
そういった選手が増えてきたら、日本でもまたセリエAの人気が再燃するかもしれません。

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